昆虫食の代表、蜂の子、ザザムシ、イナゴ

 昆虫は古くから国内外で食されてきた歴史があり、現在でも多くの地方でさまざまな虫が食され親しまれています。国内での昆虫食の代表といえば蜂の子、ザザムシ、イナゴがあります。それぞれの特徴をご紹介します。

■蜂の子

 蜂の子はクロスズメバチ、ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチ、クマバチ、キイロスズメバチ、オオスズメバチの幼虫とさなぎを合わせた総称です。時に、ほとんど成虫に近い幼虫も含まれることがあります。

 蜂の子として食用にされるのは雄の蜂の幼虫で、女王蜂や雌の蜂は食用ではなく、ローヤルゼリーやはちみつの採集のために使われます。

・蜂の子が食される地方

 蜂の子は岐阜県、長野県、愛知県、静岡県、山梨県、栃木県、岡山県、宮崎県などの山間部を中心に食用として古くから活用されてきました。海から離れた山の地域では、魚介類からのたんぱく質の確保が容易ではなく、蜂の子はたんぱく質を補うための貴重な食材だったのです。現在でも、それぞれの地方で、郷土料理として蜂の子は親しまれ続けています。

・地方での呼び名

 蜂の子は岐阜県恵那市、中津川氏などの東濃地方、静岡市葵区の山間部では「へぼ」、長野県では「すがら」、「すがれ」などと呼ばれています。

・蜂の子の食べ方

 炊き込みご飯、佃煮、甘露煮、混ぜご飯、五平餅、そうめんに入れるなどの食べ方があり、瓶詰、缶詰にされたものも市販されています。

■ザザムシ

 ザザムシはトビケラ、カワゲラなど、川の浅瀬に生息している水生昆虫の幼虫の 総称です。川の水がザザザザと流れる浅瀬は「ざざ」と呼ばれ、ざざに生息している虫なのでザザムシと呼ばれるようになったといわれています。

・ザザムシが食される地方

 ザザムシは長野県 天竜川上流の伊那地方のみで食されています。蜂の子と同様、たんぱく質が手に入りにくかった時代の貴重なたんぱく源として、家庭料理として食べられてきました。

・ザザムシの食べ方

 ザザムシは冬場の寒い時期に身が締まり脂が乗って美味しく、佃煮にしたものは高級珍味とされています。ザザムシの佃煮は長時間かけて煮込んで作られ、お酒のおつまみとして地元で人気です。

 ザザムシの漁は、漁協の組合員が鑑札を購入した場合に限り行うことができます。

■イナゴ

 バッタの仲間のイナゴは、長野県をはじめとする全国の山間部で幅広く食用にされています。食用にはイナゴの成虫を使います。イナゴは稲を食べる害虫で駆除が必要となる一方で、貴重なたんぱく源として古くから食用として利用されてきました。

・イナゴの食べ方

 イナゴは佃煮にして食べる方法が一般的です。家庭で調理する場合、箱の中などに入れ絶食状態にし、フンを出す必要があります。羽や足を取ってから調理すると食感が良くなります。イナゴは寄生虫がいる可能性があるので、生食はしないようにし、必ず火を通してから食べます。味は海老に似ているといわれています。

■昆虫食の利点

 昆虫が世界中で昔から食用にされてきたのは、たんぱく質、アミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を多く含んでいるという理由があります。特に食糧難の時代には、昆虫は貴重なたんぱく源で、現在でも昆虫を常食する習慣のある地域は多く存在しています。国連でも、食料危機を乗り越えるために昆虫食を推奨しています。