蜂の子の郷土料理

 蜂の子は古くから良質なたんぱく質を含む食材として、長野県、岐阜県、愛知県、静岡県、山梨県、栃木県、岡山県、宮崎県などの山間部を中心に食されてきました。調理方法もさまざまで、それぞれの地方の特色を生かした郷土料理として現代も親しまれ続けています。

■蜂の子の郷土料理

・炊き込みご飯

 岐阜、静岡、愛知の一部では蜂の子入りの炊き込みご飯が郷土料理として食されています。

 岐阜県の恵那市、中津川市では蜂の子は「へぼ」と呼ばれ、蜂の子入りの炊き込みご飯は「へぼめし」と呼ばれています。へぼめしにはクロスズメバチの子が使われ、毎年11月には「へぼ祭り」という催しが開かれています。

 静岡県藤枝市岡部地区では蜂の子入りの炊き込みご飯は「はえはち飯」と呼ばれ親しまれています。

・蜂の子入り五平餅

 同じ岐阜県の東濃地方で、炊き込みご飯ともうひとつの伝統的な郷土料理として 「へぼ五平」と呼ばれる蜂の子入りの五平餅も親しまれています。

 五平餅は長野県木曽、伊那地方から岐阜県の東濃、飛騨、富山県南部地方、愛知県奥三河、静岡県北遠、駿河、山梨県に伝わる郷土料理で、潰したうるち米を 竹串に縦長の楕円形にして練りつけ焼きます。味噌、醤油、砂糖、胡麻などを混ぜ合わせてタレを作り、素焼きしたうるち米に塗り焼き上げたものです。地方により五平餅の形やタレに使う材料が違います。

 この五平餅に蜂の子を擦り潰し、ペースト状にしてタレに混ぜて塗って焼いたものがへぼ五平です。へぼ五平は、見た目に蜂の子の形状が残っておらず、蜂の子 が苦手な人でも抵抗なくいただくことができます。

・蜂の子そうめん

 宮崎県北部の山間部には、蜂の子入りのそうめんがあります。「はち汁」と呼ばれるそうめんは、蜂の子を油で炒め出汁に使った温かいそうめんです。オオスズメバチの子で取った出汁はバターのような濃厚さがあり、独特のコクと風味が楽しめます。出汁だけでなく、そうめんにも大きな蜂の子を乗せて食べます。

・佃煮

 蜂の子の佃煮は、主に長野県の郷土料理として知られています。蜂の子を油で炒め、醤油、みりん、酒、砂糖で甘辛く味をつけ煮つけます。お酒のおつまみやおにぎりの具などに使え、日持ちもするので重宝されています。瓶詰めにした市販品も売られています。

・すがり飯

 すがり飯は信州地方の郷土料理で、醤油と砂糖で煮た蜂の子を、炊きたての白いご飯に煮汁ごと混ぜ合わせたものです。炊き込みご飯よりも簡単に手間をかけずに作ることができます。すがり飯は蜂の子入りの混ぜご飯です。

 蜂の子を食べたことがない人、見た目が苦手な人は、まず、蜂の子入りの五平餅を試してみてはいかがでしょうか。蜂の子の原型が残っていないので、食べやすいと思います。岐阜や長野、宮崎方面へ足を運ぶ機会があれば、是非、蜂の子の郷土料理を味わってみてください。