クロスズメバチと蜂の子

 蜂の子は、スズメバチ、ミツバチ、クマバチ、アシナガバチ、クロスズメバチなどの食用とされる蜂の幼虫の総称です。蜂の種類により食感にも多少の違いがあります。今回は主に長野や岐阜の蜂の子料理に使われるクロスズメバチについてご紹介します。

■クロスズメバチの蜂の子

 岐阜県、東濃地方、伊那市、中津川市ではクロスズメバチの蜂の子は「へぼ」、長野県では地域により「スガリ」、「スガレ」、「スガル」、「ジスガレ」、「ドバチ」などと呼ばれ、郷土料理として古くから親しまれています。

■ たんぱく源としての蜂の子

 蜂の子は岐阜、長野、栃木、山梨、愛知、岡山、宮崎などの山間部を中心に古くから重宝されてきました。その理由は、蜂の子などの昆虫は、魚介類の流通が乏しかった頃の山間部に住む人々の貴重なたんぱく源となったからです。

■クロスズメバチの特徴

 クロスズメバチはハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属に属し、黒い体に白色の縞模様があります。大きさは女王蜂で15mm程と、ほかのスズメバチ属の蜂に比べあまり大きくはありません。

 クロスズメバチは全国的に生息し、特徴として畑や森、河川の土手などの土の中のあまり目立たないところに巣を作るので、地蜂(じばち)とも呼ばれています。

 しかし稀に屋根裏や民家の軒下、樹木の穴などに巣を作ることがあります。活動時期は蜂の中では長く、3月下旬頃から12月頃までとなります。

 クロスズメバチは肉食で、ハエやクモ、小型の虫などを補食し、攻撃性はあまりありません。

■クロスズメバチの蜂の子の食べ方

 クロスズメバチの蜂の子は醤油と砂糖、酒を絡めた佃煮にして食べるのが最も一般的です。また、炊き込みご飯、混ぜご飯、素揚げ、バター炒め、五平餅などにも使われています。

 信州では クロスズメバチの成虫をそのまま焼きこんだ地蜂せんべいや、蜂の子の佃煮を瓶詰にした高級珍味も販売され、お酒のおつまみとしても人気があります。

■蜂の子の栄養

 蜂の子にはたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミンC、ビタミンB群、カリウム、亜鉛、マグネシウム、鉄、銅、カルシウム、リンなどが含まれています。

 オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、ラウリン酸などの脂肪酸も含みます。

 また必須アミノ酸9種類と非必須アミノ酸10種類を含む、ほぼ完璧に近い栄養成分のバランスの取れた食品です。

■クロスズメバチの蜂の子の味

 クロスズメバチの蜂の子の佃煮は調味料の味が強く、他の食材の佃煮とあまり変わらない味がします。佃煮は蜂の子の料理の中では、初めての方でも抵抗が少なく食べることができるおすすめの調理法です。

 バター炒めや素揚げでは、蜂の子の体が大きく白い個体が美味しいといわれています。お腹の部分が黒っぽく透けて見える個体は、味にかなり癖があります。黒い部分を取り除いて調理する方法がおすすめです。成虫に近い個体は歯ごたえがあり、海老のような食感が味わえます。